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転職市況ウォッチ2026年9月号|賃上げは業界で真っ二つ。あなたの業界は上がっている側?

コラム
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先月号で「世の中の給料は前年比+3.5%上がっている」とお伝えしました。今月、その中身を業界別に分解してみたところ、まったく違う景色が見えてきました。

賃上げ率が2桁に届いた業界がある一方で、前年よりマイナスの業界もあります。「世の中は賃上げ」という一言でまとめられるほど、現実は平らではありませんでした。

この連載は毎月、公的データと現場の実感から「30〜40代の会社員は、今どう動くべきか」を定点観測します。エージェントと違って求人を売る立場ではないので、動かない方がいい月は「待ちましょう」と正直に書きます

今月の5つの答え

皆さんの疑問 今月の答え
Q1. 求人はどのくらいある? 1人に2.71件(先月2.55件)。3ヶ月連続で増加
Q2. どの業界が特に熱い? 今月は金融が浮上(先月はIT・DX)
Q3. 自分の業界は報われる場所? 賃上げは業界で真っ二つ。+11%台からマイナスの業界まで
Q4. 世の中の給料は上がってる? +3.4%・実質+1.6%。プラスだが伸びは鈍化
Q5. これから求人は増える?減る? 現場は「これから良くなる」と見ている(今月から観測開始)

Q1. 求人はどのくらいあるのか?

2026年7月の転職求人倍率は2.71倍。転職希望者1人に対して2.71件の求人がある計算です(前月差+0.16ポイント、前年同月差+0.29ポイント)。先月号でお伝えした2.55倍からさらに増え、3ヶ月連続の上昇です。

中身を見ると、求人数は前年同月比+17.2%と大きく増えている一方、転職希望者数は前月比▲5.0%と減りました。ライバルが減って、選べる求人が増えている——数字の上では、動く人にとって有利な状況が続いています。

労働市場全体でも、完全失業率は2.4%(前月比▲0.1ポイント)と低い水準です。有効求人倍率は1.18倍で先月と同水準でした。

出典:パーソルキャリア「doda転職求人倍率 2026年7月」総務省統計局「労働力調査(2026年7月分)」厚生労働省「一般職業紹介状況(令和8年7月分)」

Q2. どの業界が特に熱いのか?——今月は「金融」

先月号ではIT・DXが突出していましたが、今月トップに立ったのは金融でした。

帝国データバンクの調査では、正社員の人手不足を感じている企業の割合は全体で51.3%。業種別のトップは金融の67.1%(前年同月比+6.4ポイント)で、先月号で紹介した情報サービスと入れ替わりました。調査元は理由として、M&A・事業再生・DXなど専門的なサービスの需要が年々広がっていることを挙げています。

ここで注目したいのは、金融でもDXが人材不足の理由に挙がっている点です。IT業界が採用を増やしているのではなく、あらゆる業界がデジタル人材を取り合っているという構図が、別の業界のデータからも裏付けられた形です。

なお、求人数の増加率で見ると7月は「エネルギー」「商社」が上位でした。単月の増加率は月ごとに入れ替わるため、1ヶ月の動きだけで判断せず、数ヶ月の流れで見るのが賢明です。この連載を毎月続ける理由でもあります。

出典:帝国データバンク「人手不足に対する企業の動向調査(2026年7月)」

Q3. 自分の業界は「報われる場所」か?——賃上げは真っ二つ

ここが今月の本題です。「世の中は賃上げ」と言われますが、業界別に分解すると、上がっている側と下がっている側にきれいに分かれます。

業界(抜粋) 前年比
学術研究・専門技術サービス +11.7%
金融業・保険業 +11.6%
生活関連サービス業等 +9.4%
電気・ガス業 +7.3%
医療・福祉 +5.8%
情報通信業 +4.9%
【全産業平均】 +3.4%
製造業 +2.7%
運輸業・郵便業 +0.2%
卸売業・小売業 ▲0.4%
建設業 ▲1.2%
不動産・物品賃貸業 ▲4.7%

上位と下位の差は16ポイント以上。同じ「2026年の日本」で働いていても、賃上げの波が来ている業界と、来ていない業界があるということです。

先月号では、業界別の平均年収に約3倍の開きがあることをお伝えしました。今月わかったのは、その差が今まさに広がる方向に動いているということです。もともと給与水準が高い電気・ガス業や金融業が、さらに高い賃上げ率で伸びている。一方、水準が低めの業界の一部はマイナスに沈んでいます。

これは当サイトが繰り返しお伝えしてきたことの裏付けでもあります。年収は「何をやっているか(職種)」より「どこで働いているか(業界)」で決まる部分が大きい。頑張りが足りないのではなく、構造の問題です。だからこそ、経験職種を活かしたまま業界だけを変える「軸ずらし転職」に価値があります。

⚠️ この数字を読むときの注意(3つ)

6月分のデータには夏季賞与が含まれます。賞与の有無で業界差が実際より大きく出ている可能性があります。
パートタイム労働者を含む全就業形態の平均です。パート比率が高い業界(飲食など)は、正社員の給与水準とは一致しません。
単月の前年比です。前年に特殊要因があった業界は数字が振れます。傾向は数ヶ月の流れで判断してください。

出典:厚生労働省「毎月勤労統計調査 2026年6月分結果速報」(事業所規模5人以上・就業形態計・現金給与総額の前年同月比)

Q4. 世の中の給料は上がっている——あなたの給料は?

全産業の平均で見ると、6月の現金給与総額は前年比+3.4%。物価の伸びを差し引いた実質賃金も+1.6%で、6ヶ月連続のプラスです。

ただし先月号の数字(+3.5%・実質+1.9%)と比べると、伸びはわずかに鈍化しています。賃上げの勢いがピークを越えつつある可能性は、頭の片隅に置いておいてよさそうです。

そのうえで、シンプルな点検をおすすめします。直近のあなたの昇給率は、3.4%を超えていましたか?

超えていれば、いまの場所はあなたに報いています。超えていなければ、世の中の平均に置いていかれている状態です。そしてQ3で見たとおり、その差は個人の頑張りではなく、業界そのものの事情であることが少なくありません。

ただし、即「転職すべき」ではありません。まずやるべきは、外の市場で自分がいくらなのかを測ること。測った結果「今の場所が悪くない」とわかることもあります。それなら安心して残ればいい。知らないまま留まるのと、知った上で残るのは、まったく別物です。

Q5. これから求人は増える?減る?(今月から観測開始)

ここまでは「今どうなっているか」の話でした。今月から、「これからどうなりそうか」を追う指標を加えます。

内閣府の景気ウォッチャー調査は、タクシー運転手や小売店員など景気の動きを肌で感じる立場の約2,000人に、毎月「景気は良くなっているか」を聞く調査です。そのなかに「雇用関連」の項目があり、人材派遣会社や求人広告の担当者など、採用の現場にいる人たちの実感が数値になっています。

雇用関連DI(2026年7月) 数値 前月差
今の景況感(現状判断) 46.1 +2.2
2〜3ヶ月先の見通し(先行き判断) 46.5 +1.7

この指標は50が「横ばい」の分かれ目で、50を超えると「良くなっている」、下回ると「悪くなっている」と読みます。ここから2つのことが言えます。

  • 現状も先行きも50を下回っている=採用の現場は、まだ「良い」とは感じていない
  • ただし先行き(46.5)が現状(46.1)を上回り、両方とも前月から改善=現場は「これから少し良くなる」と見ている

求人倍率は「今すでに出ている求人」の数字ですが、この指標は現場の人たちが感じている先の空気です。両方が同じ方向を向いているうちは、動くことに大きな逆風はないと考えてよさそうです。逆に、この数値が数ヶ月続けて下がり始めたら、この連載で真っ先にお伝えします。

出典:内閣府「景気ウォッチャー調査(令和8年7月調査)」(季節調整値・分野別DI)。なお内閣府は景気の基調について「中東情勢によるマインド面の下押しを中心に影響が残るものの、持ち直しの兆しがみられる」としています。

今月の結論|賃上げの波は、全員には来ていない

  • 求人は3ヶ月連続で増加(2.71倍)。ライバルは減っている。動く人には追い風
  • 賃上げは業界で真っ二つ。+11%台の業界がある一方、マイナスの業界もある
  • 世の中の平均は+3.4%。自分の昇給率と比べるのが、いちばん簡単な点検
  • 採用現場は「これから少し良くなる」と見ている(雇用DIの先行きが改善)
  • ただし全体としては平常運転。焦って動く必要はありません

先月号から続けてお伝えしているとおり、何をやるかではなく、どこで働くか。今月のデータは、その差が広がる方向に動いていることを示していました。

次号は10月上旬。同じ5つの問いで「何が変わったか」をお伝えします。毎月同じ場所で数字を追えることが、この連載の価値です。

【本記事について】掲載の数値はすべて公表元の一次情報に基づき、各出典へのリンクを明記しています(2026年8月末時点の最新公表値。統計により対象期間が異なります)。本記事は特定の転職行動を勧誘するものではなく、意思決定はご自身の状況に合わせてご判断ください。

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