先月号の業界別の賃上げ率には、夏のボーナスが混ざっていました。今月はボーナスを除いた「毎月の給料」で比べ直します。すると、ある業界の名前が3つのデータに続けて登場しました。
この連載は、公的データから「30〜40代の会社員は今どう動くべきか」を毎月定点観測します。求人を売る立場ではないので、動かない方がいい月は「待ちましょう」と正直に書きます。
今月の5つの答え
| 皆さんの疑問 | 今月の答え |
|---|---|
| Q1. 求人はどのくらいある? | 1人に2.86件(先月2.71件)。4ヶ月連続で増加 |
| Q2. どの業界が特に熱い? | 引き続き金融。求人の伸びでも名前が挙がった |
| Q3. 自分の業界は報われる場所? | ボーナスを除くと金融が+7.8%で突出。マイナスは飲食のみ |
| Q4. 世の中の給料は上がってる? | +4.7%・実質+2.4%。鈍化ではなく加速していた(先月号を訂正) |
| Q5. これから求人は増える?減る? | 採用現場の景況感は3ヶ月続けて改善し、50に近づいた |
Q1. 求人はどのくらいあるのか?——4ヶ月連続で増加
8月の転職求人倍率は2.86倍。転職したい人1人に、2.86件の求人がある計算です。

ポイントは1年前との差です。求人数は1年前より+18.7%増えたのに、転職希望者の数は1年前とほぼ同じ。求人だけが増えているので、倍率が上がっています。
なお、12月に大きく跳ねているように、この数字は季節で振れます。比べるなら1年前の同じ月(2.42倍)が確実です。労働市場全体では、完全失業率2.4%・有効求人倍率1.18倍(いずれも7月分)で、大きな変化はありません。
出典:パーソルキャリア「doda転職求人倍率 2026年8月」/同「転職求人倍率レポート(データ)」/総務省統計局「労働力調査(2026年7月分)」/厚生労働省「一般職業紹介状況(令和8年7月分)」
Q2. どの業界が特に熱いのか?——今月も「金融」
今月いちばん目を引いたのは、金融の名前が3つの別々のデータに続けて出てきたことです。

人が足りない → 求人が増える → 給料が上がる。教科書どおりの流れが、金融ではデータの上でつながって見えています。
調査元が挙げている理由は2つです。1つは、M&A・事業再生・DXといった専門的なサービスへの需要が年々広がっていること。もう1つは、日銀の利上げで貸出金利や運用益が上がり、「金利のある世界」での新しい展開に人が必要になっていることです。
伸びているのは「銀行の窓口」のような仕事ではありません。専門性を持つ人の取り合いが起きていると読むのが自然です。
出典:帝国データバンク「人手不足に対する企業の動向調査(2026年7月)」(調査は毎月・レポートの公表は3ヶ月ごと。次回は11月の見込み)/パーソルキャリア「doda転職求人倍率 2026年8月」/厚生労働省「毎月勤労統計調査 2026年7月分結果速報」
Q3. 自分の業界は「報われる場所」か?——ボーナスを除いて比べ直した
今月から、業界の比べ方を変えます。
- ボーナスを除く:基本給や残業代など、毎月決まって支払われる給料だけで比べる
- フルタイムに絞る:パートタイムで働く人を除く
ボーナスより振れが小さいので、業界の「地力」としての賃上げが見えます。

- 金融が+7.8%で頭ひとつ抜けている(Q2の流れと一致)
- マイナスは飲食だけ。先月マイナスだった建設業や不動産業は、毎月の給料ではプラス
- それでも差は約9ポイント残る。業界による差は消えていない
先月の建設業や不動産業のマイナスは、主にボーナスの増減によるものでした(先月号で使った6月の速報値でも、建設業の毎月の給料は+3.2%、ボーナスは▲7.8%でした)。ボーナスが数字をどれだけ動かすかは、下の図を見るとよくわかります。

同じ業界・同じ月でも、ボーナスを含めるかどうかで賃上げ率が3倍違って見えます。業界比較のデータを見るときは、ボーナスが含まれているかを必ず確認してください。
そしてボーナスを外しても、年収は「何をやっているか(職種)」より「どこで働いているか(業界)」で決まる部分が大きいという構図は変わりませんでした。
⚠️ この数字を読むときの注意(2つ)
① 単月の前年比です。傾向は数ヶ月の流れで判断してください。
② 「フルタイム」は統計上の一般労働者(パートタイム以外)で、正社員のほか契約社員なども含みます。
※先月号の業界別の数字は速報値で、確報では一部修正されています。
出典:厚生労働省「毎月勤労統計調査 2026年7月分結果速報」(第1表・事業所規模5人以上・一般労働者の「きまって支給する給与」および「現金給与総額」の前年同月比)/同「2026年6月分結果確報」
Q4. 世の中の給料は上がっている——あなたの給料は?
📝 先月号の訂正
先月号で、6月の給料は「+3.4%(実質+1.6%)で伸びはわずかに鈍化」とお伝えしました。その後の確報で+4.0%(実質+2.2%)に上方修正されています。実際には鈍化ではなく加速していました。速報値で判断したことによる誤りです。お詫びして訂正します。
最新の7月分は、給与総額が前年比+4.7%。物価の上がり分を差し引いた実質賃金も+2.4%です。

2025年は1年間ずっとマイナスでした。2026年に入ってようやく、給料の伸びが物価に勝ち始めたことがわかります。
では、あなたの給料はどうでしょうか。ボーナスを除いた毎月の給料は、フルタイムで働く人の平均で+4.0%。これを目安に点検してみてください。

「いいえ」でも、即転職すべきという意味ではありません。測った結果「今の場所が悪くない」とわかることもあります。知らないまま留まるのと、知った上で残るのは、まったく別物です。
出典:厚生労働省「毎月勤労統計調査 2026年7月分結果速報」(付表・第1表)/同「2026年6月分結果確報」(事業所規模5人以上・実質賃金は「持家の帰属家賃を除く総合」で実質化)
Q5. これから求人は増える?減る?——採用現場の空気は上向き
内閣府の景気ウォッチャー調査の「雇用関連」は、人材派遣会社やハローワークの職員など、採用の現場にいる人たちが景気をどう感じているかを数値にしたものです。

50が「横ばい」の分かれ目です。今の景況感も先の見通しも、4〜5月を底に上がり続け、50に近づいてきました。
数字の裏にある現場の声も2つ紹介します。
- 北海道の人材派遣会社:新しい相談の数は落ち着いているが、書類推薦や1次面接に進む件数は増えている。相談だけで終わらず、実際に選考へ進む人が増えている
- 東北のハローワーク:製造業の新規求人が5ヶ月連続で前年を上回っている(半導体関連が中心)
ただし、これは「転職のタイミング」を示す指標ではありません。採用の現場にいる人の景況感という背景情報で、コメントも一つの地域・一つの立場からの声です。転職するかどうかは、Q3・Q4で見たあなた自身の状況で判断してください。
出典:内閣府「景気ウォッチャー調査(令和8年8月調査)」(季節調整値・分野別DI、地域別の景気判断理由)。なお内閣府は景気の基調について、先月の「持ち直しの兆しがみられる」から「持ち直しの動きがみられる」へ表現を変えています。
今月の結論|「どこで働くか」の差は、ボーナスを除いても残った
- 求人は4ヶ月連続で増加(2.86倍)。1年前より求人だけが2割近く増えた
- 金融が、人手不足・求人の伸び・毎月の給料の3つで続けて登場
- ボーナスを除くと業界差は縮むが、それでも約9ポイントの差が残る
- 世の中の給料は加速していた(先月号を訂正)。点検の目安は毎月の給料で+4%
- 採用現場の空気は上向き。ただし焦って動く必要はありません。まずは測るところから
次号は11月上旬。人手不足調査の新しいレポートが出る見込みなので、金融のトップが続くのかを確かめます。
【本記事について】掲載の数値はすべて公表元の一次情報に基づき、各出典へのリンクを明記しています(2026年9月末時点の最新公表値。統計により対象期間が異なります)。図版はサラキャリ編集部が公表データをもとに作成しました。本記事は特定の転職行動を勧誘するものではなく、意思決定はご自身の状況に合わせてご判断ください。
